2017.04.10.

相続【限定承認・競売は先買権行使の前提か?】

相続の限定承認の手続きの中で先買権行使を行うにあたり、民法の条文には

(相続財産の換価)
第932条 前三条の規定に従って弁済をするにつき相続財産を売却する必要があるときは、限定承認者はこれを競売に付しなければならない。但し、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従い相続財産の全部又は一部の価額を弁済して、その競売を止めることができる。

と記載があるため、換価はかならず競売によるものであって、
先買権を行使するためにも形式競売申立が必要だと思っていました。

しかし、コンメンタールによれば、本条条文の趣旨として下記のような記載があります(ブログ用に要約してます)。


 本条の競売は、民事執行法1条の規定に基づき「担保権の実行としての競売の例による(同195)」ものである。ただし、抵当権その他の担保権の実行としての競売と異なり、換価を手続的にも公正に行うために競売制度を利用する、いわゆる形式競売の類型に属する。
 本条に反して、限定承認者が任意売却をした場合、限定承認が無効とならない(東京控判昭15.4.30評論29巻民545頁)のはもちろんのこと、売却それ自体も有効と解される。
 ただ、不当に安価な売却により相続債権者や受遺者に損害を与えた場合には、多数説は損害賠償責任を負うべきものと解している(我妻=立石・親族相続505頁など)。

 限定承認者による競売の差し止め権を認めた本条但し書きは、立法趣旨からすれば、「競売を止める」とは、限定承認者が弁済により、当該財産を取得する権利を認めたと解すべきである(同旨、東京地判明40.6.14新聞436号22頁)



かなり広い解釈になりますが、これを見る限りでは、鑑定人の評価に従い、正当な対価を弁済した場合には、競売申立がなくとも先買権の行使は認められると考えることができます。

なお、鑑定人は不動産の場合は不動産鑑定士さんが選任されますが、車その他の動産の場合でも、家庭裁判所が適切な方を選任してくれるみたいです。
たまたま自動車について鑑定人を選任してもらったことがあるのですが、一般財団法人日本自動車査定協会みたいなところで、鑑定費用は15000円くらいでした。
その他の動産の場合はいったい誰が選任されるんでしょうかね・・・・。

 <みさき司法書士事務所>

2017.04.06.

不動産登記【三井不動産、阪神電気鉄道の買戻権抹消】

最近、珍しい買戻権の抹消を行いました
何が珍しかったといいますと、買戻権が三井不動産㈱と阪神電気鉄道㈱の共有だったということです。
共有状態も珍しいですが、住宅供給公社以外の買戻権というのも珍しいです。

さらに、三井不動産㈱は買戻期間満了後に会社分割によって、買戻し権の抹消に関する業務を三井不動産レジデンシャル㈱に分割していました。
抵当権等と同じように、買戻し期間満了後(消滅後)に権利の異動があった場合には、権利を承継したことがわかる資料を添付して、買戻し権の移転は省略して抹消できます。

権利を承継したことがわかる資料は、
会社分割があったことのわかる登記簿謄本(閉鎖謄本)と、事業を分割したことがわかる証明書です。

今回は、登記義務者の方で謄本の他、「変更証明書」を用意してくださいましたので、これを利用しました。

というわけで、変更証明書(法人の実印&印鑑証明書付)、三井不動産レジデンシャル㈱と阪神電気鉄道㈱からの登記原因証明情報、委任状並びに印鑑証明書、権利者の委任状を添付して抹消登記申請を行いました

阪神間のとあるマンションなのですが、同じような物件に今後また出くわすことがあるものなのでしょうか

<みさき司法書士事務所>

2017.03.24.

訴訟【被相続人が複数ある場合の遺産分割調停申立】

今年もまだ寒い日が続きますね
早く暖かくなってほしいです。


最近、「父が亡くなり、続いて母が亡くなり、その相続人が子とその代襲相続人」という相続関係において、相続人の間で遺産分割協議が調わず、みさき司法書士事務所で遺産分割調停の申立書類を作成することになりました。

相続人達は「1つの相続」の話し合いという感覚を持っていらっしゃるのですが、法律構成で考えると、父の相続と母の相続は別々の相続になりますので、手続きも別だと考えるのが自然です。
そうはいっても、同じ調停の中で話ができればいいのになと思い、申立を行う予定の家庭裁判所に問い合わせてみたところ、「相続人が同じメンバーならひとつの手続でできますよ!」と教えてもらいました。

この場合、家庭裁判所がHPに掲載しているフォーマットは(被相続人1名のケースなので)利用できそうにありませんが、こちらで適宜用意した申立書に、被相続人1名につき収入印紙1200円のところ、2名分の2400円を貼り付けて申立をすれば良いみたいです。

添付する戸籍の原本も1通で足りるため、効率的に手続を行うことができて良かったです。

 <みさき司法書士事務所>

2017.03.12.

不動産登記【不在者財産管理人と遺産分割】

半年以上前に他県の同期の司法書士さんから依頼を受けて共同で進めていた事案がやっと終了しました

相続人の1人が行方不明で、その方について不在者財産管理人を選任し、遺産分割を行うというものです。
もともとは同期の司法書士さんが受けた相続登記のご依頼ですが、不在者が近畿地方にお住まいだったこともあり、私が最後の住所地に行って現地調査を行い、不在者の不在者財産管理人となって遺産分割協議に参加しました

一般的に手続の流れは次の通りです

1.不在であることの調査

2.不在者財産管理人選任申立

3.不在者財産管理人の選任

4.権限外行為の許可申立

5.遺産分割&登記

6.財産の管理継続(又は家庭裁判所への終了報告)

(7.選任処分の取り消し)

遺産分割の際は不在者が不利になるような遺産分割はできないため、最低限法定相続分相当を不在者に対して金銭で支払うような内容(代償分割)になっていなければ、権限外行為の許可は下りないかと思います

この際、代償金は「不在者が帰来したときに引き渡す」ような協議内容にしておくことで、不在者財産管理人は遺産分割終了後に管理するべき財産はありませんから、終了報告を行えばすぐに選任処分を取り消ししてもらうことができます。
(代償金の額面にもよるかもしれませんが・・・。そのボーダーラインは私にもわかりません。)

(管理する財産がある場合は、不在者が出てくるか、死亡が判明して相続が開始するか、管理する財産が無くなる時まで管理を続ける必要があります。)

なお、選任処分の取り消しは報告により職権で行われるものですから、家庭裁判所の一般的な申立の際に要するような収入印紙などは必要なく、返信用切手だけ入れておけば足りるようです。

 <みさき司法書士事務所>

2017.03.03.

商業登記【DES・社長借入金の一部を資本金にする方法】

はや~い気が付けば3月ですね。
2月はDES(Debt Equity Swap)のご依頼をお受けしました

DESとは、簡単に言うと会社への貸付金を現物出資にして、募集株式を発行し、資本金の額を増額させる手続きです。

DESを行う場合のポイントは次の通りです。

1.債権を特定する必要があります

社長貸付金の場合、細々した貸付けが積み重なって、大口の借入金になっているケースがほとんです。この細々とした貸付けの全てに契約書があればよいのですが、実際にはそんなものはなく、1つ1つの債権を特定する方法がありません
したがって、改めて「準消費貸借契約」を行うか、「債務承認契約」を行うなどして、契約日、債権の性質、債権額を特定してやる必要があります。

2.債権の一部だけを出資することもできます
税理士さんやほうじん経理の方が作ってくれた会計帳簿に記載されている債務の全額を前記1のようにして一つの債権にまとめた場合でも、そのうちの一部だけを出資することができます。
この場合、株主総会議事録や総数引受契約書に記載する現物出資財産の内容の記載方法については、「平成〇年〇月〇日付準消費貸借契約(債務承認契約)にもとづく金●●円の金銭債権のうち、金●●円に満つるまで」と記載すれば足ります。

3.全額を資本金に計上する必要があるか?!
DESを行う目的のひとつに、バランスシートの負債を減らしたいということがあると思うのですが、この目的を達成するには、全額を資本金に計上せず、出資を受けた価額の2分の1を資本準備金に計上するという方法を取ることでも代えられます。
登録免許税は増加する資本金の額に課税されますから、増加する資本金の額を抑えることで登記費用の節約になりますね
*ただし、法人市府民税は資本金・資本準備金の合計で算出されるので、法人市府民税の節約にはなりません。

4.弁済期が到来した債権である必要・・・?
現物出資の目的とすることができる債権は、弁済期が到来していることが必要ですが、この「弁済期が到来しているか否か」については添付書面の中で証明する必要はないため、特に会社が期限の利益を放棄していないことが会計帳簿の記載から明らかでない限りは受理されます(平18.3.31法務省民商782号民事局長通達第2部第2 3(2)ウ(エ)d)
*今回、準消費貸借契約と現物出資の日を同一日にしたのですが、この点、理論上は債務者が期限の利益を放棄することもできるため、契約日に即期限の利益放棄・喪失というのは違和感ですが、法務局からも何の指摘もなく登記が完了しました。

 <みさき司法書士事務所>

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