2020.06.26.
相続【法定相続情報一覧図の続柄】
先日、法定相続情報一覧図の取得に際して、税理士さんからこんなことを聞かれました。
「続柄の隣にでも、養子相続人が被相続人の孫であることがわかるように何か言葉を入れられないですか」と。
なぜかと言いますと、
相続税の申告の際、相続税額の2割加算が必要な相続人かそうでない相続人かを見極めるために、
その情報が法定相続情報一覧図からわかるようであれば、税務署へ提出する戸籍が他に要らないからだそうです。
<相続税の2割加算>
相続、遺贈や相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得した人が、被相続人の一親等の血族(代襲相続人となった孫を含みます。)及び配偶者以外の人である場合には、その人の相続税額にその相続税額の2割に相当する金額が加算されます。
被相続人の養子は、一親等の法定血族であることから、相続税額の2割加算の対象となりません。ただす、被相続人の養子となっている被相続人の孫は、被相続人の子が相続開始前に死亡したときや相続権を失ったためその孫が代襲して相続人となっているときを除き、相続税額の2割加算の対象になります。
今回の相続関係では、被相続人が孫(二男の子)を養子にとっており、二男はまだご存命なので、
養子の支払うべき相続税は2割加算の対象となります。
この関係性を明らかにするべく、法定相続情報一覧図に続柄として「養子」と記載し、
その隣に「相続人●●の子」というように脇書きできないかを申請先の法務局に照会しました
しかし、法務局側の回答としては
「不動産登記規則247条に、被相続人との続柄を記載すると書いてありますが、
続柄以外のこととなると、記載ができない。また、個別事案としても、出張所では判断が出来かねる・・・。」という残念な回答に
法定相続情報一覧図、これ1枚あれば税務申告にも使えると言いながらも、まだまだ制度上の不具合はありますね
<みさき司法書士事務所>
2020.05.17.
商業登記【登記事項錯誤による抹消】
昨年のことになりますが、登記事項錯誤による抹消登記を行いました
ある株式会社から「非業務執行取締役等の会社に対する責任の制限に関する規定」の登記のご依頼を受けたところ、
その株式会社には「監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定め」が登記されていました。
監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある会社においては非業務執行取締役等の会社に対する責任の制限の定款の定めをすることはできませんから、矛盾する登記がされていることになります。
定款を見せていただいても、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の条項は見当たらず・・・
定款と登記簿が矛盾しており、一方を正とすれば、一方は登記ができない旨を説明したところ、
「監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めを置いた記憶はない」「そのような登記をした覚えはないし、言われて初めて気が付いた」とのこと
詳しく話を聞きますと、どうやら平成26年の法改正後の役員変更登記を入れた際に、
司法書士ではない者に登記の依頼をして、言われるがままに申請書類に捺印を押印したところ、このような登記が入ってしまったとのことでした。
(監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めに関する商業登記法の改正についてはコチラ)
恐らく、現行定款を確認せずに、監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがあると思い込みで申請を入れてしまったのでしょう・・・。
仕方がないので、「監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定め」の登記を抹消することに
このときに登記申請書に添付したのは委任状の他、「錯誤の事実を証する書面」なのですが、
これはお伺いした事情をもとに、なぜこのような登記が入ってしまったのか(まるで反省文)の経緯をつらつらと書き綴った書類(A4用紙1枚程度)に、株式会社の代表取締役から法人ご実印でご捺印をいただいて提出しました
錯誤の事実を証明するってなかなかどう証明していいか、難しいですよね。
<みさき司法書士事務所>
2020.04.28.
不動産登記【未成年者からの委任】
最近、未成年者(といっても大学生くらい)から委任を受けて登記の申請を行うことがありました
小さなお子さんである場合には、法定代理人である親権者からの委任を受けて登記の申請を行うのが通常ですが、
19歳くらいの場合、どうしたら良いのか・・・・?
(なお、印鑑登録は16歳以上であればできます。)
この点につき次のような先例があります。
意思能力ある未成年者が不動産の贈与を受けた場合は、登記権利者として、未成年者自身が、(若しくは親権者が代理して)司法書士にその登記申請手続きを委任することができる【登研425.125】
どうやら、意思能力(10歳前後で備わるとされています。)がある未成年者が登記権利者となる場合には未成年者から委任を受けて登記の申請ができそうな感じです。
しかしながら、委任契約の成立を考えた場合に、やはり行為能力のない未成年者との契約には親権者の同意が必要ですし、
未成年者単独で登記の委任を受けることはできないであろうと考え、
私の事務所では親権者から委任状(実印+印鑑証明書)をもらって登記の申請を行うことといたしました。
(もちろん、未成年者からの委任状と親権者からの同意書でも良いかと思います。)
<みさき司法書士事務所>
2020.02.20.
不動産登記【法定相続登記後に遺産分割協議があった場合】
こんにちは
昨年の話になりますが、少し珍しい登記をしました
該当不動産は債権者により、(差し押さえのために)債権者代位でABC名義に法定相続登記がされており、その後差押は抹消されたものの、法定相続人ABCの共有状態で放置され、さらにBについては数次相続が発生して、Bの相続人はDEFであるという物件でした。
「今日現在の相続人全員で遺産分割を行い、Aの単独名義に変更したい」というご相談をお受けして、「年月日遺産分割を原因とする持分全部移転登記」を行いました。
その際、数次相続が発生しているBについて、DEFへの法定相続登記が必要か?と検討したのですが、「遺産分割の効力は相続発生時に遡る」ということを根拠に不要であると判断し、ACDEFの5名で遺産分割を行い、その遺産分割協議書を登記原因証明情報として添付して「B持分全部移転」「C持分全部移転」の登記申請を行いました。
「B持分全部移転」の登記は相続人DEF全員が登記義務者となって申請を行いました。
特に法務局からの補正指示などもなく登記が完了しましたので、またひとつ良い経験になったと思います
<みさき司法書士事務所>
2020.01.29.
商業登記【合同会社の社員の利益相反取引】
久しぶりにHPを開いたら、約150日ぶりのログインだと表示されました
忙しいのを言い訳に、かなりさぼってしまったので、今年は頑張ってまたブログ再開するぞとたった今心に誓いました
さて。
最近、合同会社の業務執行社員と合同会社との間での不動産売買の所有権移転登記を行いました
ここで問題となるのは業務執行社員と合同会社との利益相反取引です
株式会社の場合は、利益相反取引を承認した株主総会議事録(取締役会設置会社の場合は取締役会議事録)を添付する必要があるのですが、
合同会社の場合はどうなるのかと思って調べてみました。
業務執行社員が会社と取引をする場合には、当該取引は利益相反取引にあたり、当該社員以外の社員の過半数の承認を得る必要があります(会社法595Ⅰ)。
*この場合の社員には業務執行社員の他、業務執行権を有しない社員も含みますので注意
この承認を得た「過半数の一致を証する書面」ないしは「同意書」(各社員が実印で押印し、印鑑証明書を添付する必要があります。)なりを
所有権移転登記の申請書に「第三者の許可を証する書面」として添付する必要があります。
また、合同会社は業務執行社員は登記事項となりますが、業務執行権を有しない社員は登記事項とならないため(定款にのみ記載されます。)、
他に社員がいないかどうかを証明するために定款も添付書面となるようです。
もし社員が業務執行社員1名だけという場合には(実際はこのパターンが多いかもしれませんね)、
利益相反取引についての承認は不要ですので、定款のみ添付すれば足りるようです。
<みさき司法書士事務所>