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2015.02.09
相続【地方裁判所の和解調書を添付した相続登記】
昨年末、弁護士さんからちょっと困った相談がありました。
地方裁判所で遺産分割を行った和解調書を添付して、
相続人から単独で相続登記申請ができるかどうかです。
民法の規定では、遺産分割が調わないときは、家庭裁判所に遺産分割を請求できるとなっており、
遺産分割は家庭裁判所で行うことが民法上要請されています。
したがって、通常、争いのある遺産分割協議は家庭裁判所で行うため、添付するとすれば、
家庭裁判所の調停調書、審判書正本、判決正本です。
ところが、遺産分割の前提問題(例えば本人死亡前後に使途不明金があるとか…。)がある場合には、
前提問題は家庭裁判所ではなく、別途地方裁判所や簡易裁判所で解決することになります。
今回のケースは、地方裁判所で前提問題を解決した上で、
遺産分割協議もついでに行ったので、その和解調書を添付して登記したいという相談でした。
そこで、この地方裁判所での和解調書を添付して単独での相続登記申請ができるのか?
という問題に発展しました。
地裁での和解調書の場合、家庭裁判所での遺産分割の調書と異なり、
必ずしも相続人全員が関与しているとは限らない点と、
民法上の要請があるため、判決と同じ効力を有すると言っても、
家庭裁判所での調停調書と全く同じように扱うというのは難しいかもしれません。
しかし、遺産分割の和解に相続人全員が参加しているということであれば、
戸籍謄本等を添付することにより、登記原因証明情報として利用することができると考えるのが自然です。
そのため、いろいろ調べたところ(同業者にも法務局にも確認しました。)、
■登記名義人(被相続人)の相続人全員が当事者となっている。
■和解調書には、被相続人名義の不動産を特定の相続人が取得する旨の遺産分割協議が和解成立と同日に成立したことを確認する条項がある。
この要件を満たせば、なんとか地方裁判所で行われた遺産分割協議の和解調書正本を添付して、
相続登記の申請ができるということがわかりました。
なお、相続人全員が参加している旨(相続人確定)の記載が調書から明らかでない場合は、
相続人を明らかにするため、戸籍謄本等は全て添付する必要があります。
実務上、家庭裁判所では、使途不明金等の前提問題で争っている場合は、
「別途地方裁判所で解決してから家裁に遺産分割を持ち込んでくださいね。」
という説明がされているそうですが、
きっと地方裁判所で主たる請求のついでに、遺産分割も和解でまとめてしまったんでしょう。
もう一度遺産分割協議書を作って相続人全員から実印押して印鑑証明書付けてもらって…
となると、相続人同士が揉めている事案ではお願いしにくいので、
和解調書正本の添付で登記ができることがわかり、安心しました。
地方裁判所で遺産分割ができてしまうのであれば、その方が手っ取り早いですよね。
実務上、よくあることなのかな?
<みさき司法書士事務所>
コメント
涼さんへ
コメントありがとうございます。
私自身の経験が勉強になったとのこと、私も嬉しく思います。
日々の経験をもとに、つたない文章ですがこれからもマイペースに綴っていきますので、また機会があれば読んでくださいね。
- 2015.02.13 10:20
- 三輪
司法書士事務所で働いています。
とても勉強になりました。不明なことは、明らかになるまで調べることですよね。
- 2015.02.12 23:03
- 涼
コメント失礼いたします。
現在、全く同じ問題で法務局に問い合わせたところ、文献等がないかと逆に質問されてしまいました。
もし、登記先例などありましたら、教えていただくこと可能でしょうか。
不躾なお願いで大変申し訳ありませんが、宜しくお願いいたします。