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2013.06.14
成年後見【意思無能力者・制限行為能力者との取引】
昨日、百貨店が認知症女性に大量に商品を売ったとして、ニュースになっていましたね
しばしば、高齢者等との取引において、契約の有効性が問題となるケースがあります
契約の有効性と取消、無効の関係について、書いてみたいと思います。
まず、民法上、権利能力・意思能力・行為能力の3つが揃っていなければ、
有効に法律行為を行うことができないとされています。
つまり、有効に契約を締結することができないのです
権利能力とは、権利義務の主体になることができる能力であって、
自然人や法人が生きている限り必ず持っている能力です。
意思能力とは、契約を成立させるにあたり、どのような効力が発生するのかを認識し、判断した上で意思を表示する一種の判断能力です。
行為能力とは、単独で有効に法律行為をすることができる能力です。
(民法上、未成年、成年被後見人、被保佐人、
同意権付与の審判を受けた被補助人は制限行為能力者とされています。)
<重度の認知症の方(意思無能力者)と取引行為を行った場合>
一般的に重度の認知症の方というのは意思能力が欠けていると考えられますので、
このような方が売買契約を結んだとしても、契約は効力を有しません。
つまり、無効な契約ということになります。
契約が無効ということであれば、当然ですが、売買代金を受領していた場合には返還義務が生じます。
今回ニュースになっていたのはこれですね
<制限行為能力者と取引行為を行った場合>
民法上、制限行為能力者が取引行為を行った場合について、以下のように定められています。
未成年者…同意を得ないでした行為は取り消すことができる(5Ⅱ)。
成年被後見人…日用品の購入その他日常生活に関する行為以外は常に取り消し可(9)。
被保佐人…同意又はこれに代わる裁判所の許可を得ないでした行為は取り消すことができる(13Ⅳ)。
同意権付与の審判を受けた被補助人…同意又はこれに代わる裁判所の許可を得ないでした行為は取り消すことができる(17Ⅳ)。
制限行為能力者は、行為能力が制限されるのであって、行為能力がないわけではありません。
したがって、法律行為はいったん有効となるのですが、取り消しうる法律行為となるのです。
つまり、これらの者と取引行為を行った場合には、
後から取り消しをされる可能性があるということに注意しなければなりません。
取り消しがされた場合、契約時に遡って契約が無かったことになりますから、
当然売買代金等を預かっているのであれば、それを返還する義務が生じます。
<高齢者の親族等が本人を代理して契約を行った場合>
これ、ときどきあるんですよね。
本人が寝たきりであったり意思表示のできない場合に、
その親族等が本人の代わりに本人の不動産を売却したり…というケース
これがどういう根拠で危険なのかを説明します。
本人以外の者が本人のために法律行為を行うことを、代理と呼びます。
本人から委任を受けた(委任状がある。)、若しくは、
法律上当然に代理権がある方(親権者、成年後見人等)が、
本人を代理して契約を締結する場合にはいっこうに問題がないのですが、
本人が状況を理解できず、代理権を与えていないにも関わらず、
親族等が勝手に本人を代理して契約を行うと、無権代理に該当します。
無権代理行為によってされた契約は、本人の追認がない限り、無効なのです。
後から無効を主張されてしまうと、大変なことになってしまうのです。
ですから、本人が法律行為を行うことができない状態にある場合には、
法定代理権を持つ成年後見人等を選任して、その者と契約を締結することが大切です。
また、既に成年後見人等が選任され、本人の行為能力が制限されている場合には、本人ではなく、
成年後見人等と契約を行うことが大切です。
意思無能力者である本人や、代理権のない者との法律行為は無効、
制限行為能力者との法律行為は取消される可能性があることに注意しなければなりません。
最近はどこでもコンプライアンス遵守がうたわれ、契約に厳しくなってきておりますが、
まだまだ周知徹底されていないのが現実です。
某老人ホームでも、私という存在がありながら被後見人さんの親族と入所契約を結んでいたりとかありましたしね・・・。
まぁ、本人のためになってるので、後から無効を争うこともめんどくさいので、いちいち何も言いませんけど。
<みさき司法書士事務所>