遺言
遺言とは、人が自分の死後の法律関係を定めるために行う法律行為をいいます。
相続人間での遺産の分け方はもちろん、相続人以外の者への贈与(遺贈といいます。)、子の認知、相続排除など、
遺言で行うことができるものはいろいろあります。
*死後の葬儀や供養についての遺言は、民法でいう遺言ではありません。
遺言の種類
遺言は、次の4つに分類されます。
①自筆証書遺言
②公正証書遺言
③秘密証書遺言
④危急時遺言
特に①~②が一般的な遺言ですが、このうち、一番確実に遺言を残すことができるのが公正証書遺言です。
- なぜ公正証書で書く遺言が良いと言われているのですか?
-
主な理由は2点です。
①「検認」の手続きを省略できること。
自筆証書遺言や秘密証書遺言で遺言を書いた場合、相続開始後に、相続人(あるいは遺言で贈与を受けた者)が、家庭裁判所に「遺言の検認」を申し立て、「検認」の手続きを経たあとでなければ、その遺言に従った相続手続きができないためです。
もし、公正証書で遺言を書いた場合には、「検認」の手続きを省略することができます。
②遺言を公証役場で保管してもらえること。
自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合は、遺言を自分で保管しておく必要があります。
しかし、公正証書遺言の場合には、自分で正本を保管する他、公証役場で原本を保管してもらえます。
そのため、万が一、本人が遺言を紛失した場合でも、公証役場に相続人等から問い合わせることによって、
遺言を発見することができます。
遺言の作成方式
自筆証書遺言
1.遺言書の全てを遺言者が自筆で書き、正確な作成日付を添えます。
2.遺言者が住所氏名を署名捺印します。
*遺言書が数枚にわたる場合には契印が必要です。
3.遺言の内容はわかりやすく記載します。
4.封をして大切に保管します。
*相続人に発見してもらえるような場所に保管しておくことが望ましいです。
5.遺言者の死後、相続人が家庭裁判所の検認の手続きを経て、開封します。
公正証書遺言
1.遺言書の下書きを作成します。
2.遺言者及び証人が公証役場に行き、下書きを公証人に提出します。
3.公証人が、遺言者の下書きの内容を確認し、遺言者及び証人に読み聞かせます。
4.公証人、遺言者及び証人が署名捺印します。
5.原本を公証人が保管し、正本を遺言者が保管します。
6.遺言者の死後、家庭裁判所の手続きを取る必要はありません。
秘密証書遺言
1.遺言書の全てを遺言者が自筆で書き、正確な作成日付を添えます。
2.遺言者が住所氏名を署名捺印します。
*遺言書が数枚にわたる場合には契印が必要です。
3.遺言の内容はわかりやすく記載します。
4.封をして封筒に捺印します。
5.公証役場において、証人2人以上立会いの下、公証人に遺言書を提出します。
6.遺言者、証人、公証人がそれぞれ署名捺印します。
7.遺言者が遺言書を保管します。
8.遺言者の死後、家庭裁判所の手続きを経て、遺言書を開封します。
各遺言の特徴
自筆証書遺言 | 公正証書遺言 | 秘密証書遺言 | |
---|---|---|---|
証人 | 不要 | 2人以上の立会い | 公証人1人及び 証人2人以上の前に提出 |
筆者 | 本人 | 公証人 | 誰でもよいが自筆が望ましい |
署名・捺印 | 本人 | 本人・証人・公証人 | 本人・証人・公証人 |
家庭裁判所の検認手続 | 必要 | 不要 | 必要 |
公証人の費用 | - |
目的物の財産の価額による。 |
一律11,000円 |
遺言の内容
遺言では、相続分の指定、遺贈、遺産分割方法の指定等の他、認知や相続排除、未成年者後見人の指定等が可能です。
遺言の内容について、詳しくはご相談ください。
遺言執行者の指定
遺言執行者とは、遺言書の内容を具体的に実現する人のことをいいます。遺言執行者は遺言に書かれてる内容に沿って、相続人の代理人として相続財産を管理し、名義変更等の各種手続きを行います。
遺言執行者は遺言で指定する他、指定がない場合には相続人等の利害関係人からの申立により、家庭裁判所が選任することができます。
せっかく遺言を残していても、遺言執行者がいなければ、確実に遺言に従った相続財産の分配をしてもらえるとは限りません(相続人間に紛争が生じる恐れのある場合はなおさらです。)。
また、認知、相続排除を遺言の内容としているときは、必ず遺言執行者が必要となります。
遺言執行者は未成年及び破産者に該当しない限り、誰でもなることができます。
当事務所でも遺言執行者の任務を引き受けることは可能ですので、ご相談ください。なお、この場合の遺言執行者報酬は、遺言の中に「家庭裁判所の審判により定める」と記載し、執行後に家庭裁判所に報酬額を定めてもらうことにしています。その方法が、一番客観的で公平な基準であると考えているからです。
相続に関すること以外の遺言(エンディングノート)
最近エンディングノートと呼ばれるものが流行っていますね。
自分の死後、こうしてほしい、ああしてほしいというものです。
相続人がいて、きちんと希望どおりに死後事務を行ってもらえる場合には希望を何かに書くなどして残しておくことは有効な手段だと思いますが、相続人がいない場合はどうでしょう?
そんな方のために、死後事務委任契約というものがあります。
通常、民法では委任者の死亡により、委任契約は自動的に解除されるのですが、死後事務委任契約の場合は、委任者の死によって契約が解除されない旨の特約をつけて、お元気な間に契約します。
任意後見契約と同時に行います。こちらのページをご覧ください。